しいなゆきこ『五感を大切にする介護』

五感とは、ヒトや動物が持つ感覚機能のことで、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚を総称したものです。身体の目・耳・皮膚・口・鼻の5つの器官で感じています。この五感は生まれ持った感覚機能で、赤ちゃんの頃から繰り返し刺激を受けることで感覚がさらに発達し、脳を刺激し、記憶として残ります。たとえば、母親に抱かれた時の触覚や嗅覚や聴覚、母乳や離乳食などの触覚、味覚、嗅覚など産まれて初めての感覚が脳を刺激しながら発達していくのです。誰でも思い当たることがあると思いますが、ある匂いを嗅ぐとよみがえる記憶があったり、お料理から思い出す経験があったり、ホッとしたり安心する味があったりしませんか。逆に、聴くと不安な気持ちになる音があったり、悲しい気持ちになる景色があったりすることもあると思います。五感はヒトを幸せな気持ちにも、辛く悲しい気持ちにもさせることがあるのです。

家庭料理で子どもの五感を鍛える話は今まで何度もしてきましたが、同じように介護にも積極的に取り入れてみようと試みています。五感と脳は密接な関係にあります。感覚器官で受けた刺激が脳へ信号として送られ、認知し、運動へと繋がります。高齢者の五感は、老化現象として知られるように「目が見えにくく」なったり「耳が遠く」なったりと、感覚機能が低下していると考えられます。感覚機能が低下すると、脳へ送られる情報が減り、認知機能も低下し、運動機能も低下していくといったドミノ倒しの現象が想像できるわけです。それならば、低下している感覚器官を刺激し続けてあげれば、入ってくる情報を増やし、脳の活性化、運動の向上へとつながるのではないか?という仮説のもとに実践してます。

日常のあらゆる場面で五感を刺激していくわけですが、まず「季節感」というのがあります。部屋の中に籠もりっきりな義母には、窓を開けて日差しを入れたり、外の空気や風を感じてもらいます。晴れていても、雨の日でも。「あ、キンモクセイの香り!!」この言葉だけでも十分に五感を刺激できているのです。

毎日の食事にも変化をつけます。季節感を食卓に盛り込み、懐かしいと感じるものや、楽しい記憶のある料理などを織り交ぜます。食感も、咀嚼や嚥下レベルにあったものを用意するようにします。お料理を食べながら、楽しかった昔話を始めたら、それでOKです!

このほかに習慣付けもしています。身体が不自由になると、着替えが面倒だったり、”身体の清潔”という部分が億劫になりがちです。着の身着のままで過ごしたり、一年中同じものを着ていたり…。それでは感覚機能がどんどん低下してしまいます。そこで毎朝の習慣として行なっているのが身体の清潔として”清拭”と”着替え”です。この朝の習慣に私はアロマをプラスして取り入れてみました。嗅覚の刺激です。使用しているエッセンシャルオイルはラベンダー、オレンジ、ペパーミントを主として使っています。このほかにもたくさんのエッセンシャルオイルがあるので、色々取り入れながら私自身も介護を楽しんでいます。

効能を記しておきます。

◇ラベンダー:美肌・リラックス
◇オレンジ:リラックス
◇ペパーミント:頭をスッキリ・デオドラント・抗菌・空気の浄化

夏の間はぬるま湯でも十分ですが、最近は気温が低くなってきたので、洗面器に少し熱めの湯を張り、そこにエッセンシャルオイルを数滴垂らしています。湯気と一緒に香りも広がっていい気持ちになります。まず、エッセンシャルオイルを薄めたスプレーを頭にシュッシュッとして頭髪や地肌をマッサージするとサッパリして気持ちが良いようです。そのあと、エッセンシャルオイルを垂らした湯でタオルを絞り、温かいまま肩にかけてしばらく肩や腰を温めたり、全身を拭きます。最後に、残り湯に足をしずめてマッサージしながら足湯をすると血行がさらによくなります。着替えた後は「身体がポカポカする」と言っていました。このようなアロマを用いた清拭も、五感の刺激になりますね。

つい一ヶ月前、義母の容体が悪く、このまま命が尽きてしまうのではないか…と、感じるようなことが続いていました。今もあまり良くはないですが、以前より顔色も良くなってきました。毎朝の清拭の時に義母は「ゆきちゃんと手を繋ぎたい」とせがみます。安心するのだと言います。いつも両手をつないで、そのあとは抱きしめてあげるようにしています。ハグすると、だんだん小さくなっていく義母を肌で感じています。この感覚も大切にしたいと毎日思うのです。

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