ぬか床は、祖母から母へ、母から娘へ、娘からそのまた娘へと、長い間受け継がれてきた日本の食文化です。四季折々の野菜を風味豊かに味わう日本の伝統は、乳酸菌の働きに注目され、日本の誇るべき発酵食品のひとつとして人気沸騰中です。
ぬか床の材料の一つ、糠(ぬか)は玄米を精米した時に出る外皮と胚芽の混合物のこと。脂肪(18%)・タンパク質(13%)・リン・カリウム・ビタミンではB1・ナイアシンを多く含みます。脂肪と言ってもお肉のギトギト脂とは性質が異なり、米ぬか油(植物性油脂)の原料となるリノール酸の多い油です。また米ぬかは、家畜の飼料や農作物の肥料のほか、ワラビやタケノコなどを茹でる時のアク抜きにも使われます。
ぬか床をはじめるのに適した時期は室温が25℃くらいになる春〜初夏と秋です。この時期がいちばんぬか床が適度に発酵しやすいためです。

◉ぬか床を作る
ぬか床の材料は、生ぬか、塩、昆布、唐辛子、山椒の実、柚子の皮、水を準備します。
塩は精製塩ではなく自然塩を、水は水道水ではなくミネラルウォーターがオススメです(水道水には塩素が多く含まれているため)。昆布でうま味を、唐辛子は防腐作用と味の引き締め、柚子の皮は香りづけと風味をよくします。
(材料)
生ぬか … 1㎏
水 … 1L(ぬかと同量)
塩 … 70g(あとから足してもよいです)
昆布 … 適量
唐辛子 … 2~3本分(お好みに合わせて)
山椒の実 … あれば20g程度
柚子の皮 … 1/2個以上
捨て漬け野菜 … 適量
(作り方)
- ぬかに塩と水を混ぜ合わせる
- 唐辛子と山椒の実を混ぜ合わせる
- 容器の底に昆布を敷き、そこにぬか床を入れる
- 捨て漬け野菜を入れる(ぬか床の発酵を促進するために捨て漬けは必要な栄養分となり、適度な水分を補充するためにも必要です)
- 表面を手のひらで強く押し付け平らにならす(しっかりと空気が抜いておくと乳酸菌の活性を促します)
- 捨て漬け野菜の交換の目安は常温で2〜3日。触らずにそっとしておきます。2~3日ほど経ったら、底面から大きく混ぜます。野菜を入れ替えるときは漬けておいた捨て漬け野菜のぬかをできるだけ落とし、野菜の汁をしぼってぬか床に戻します。この捨て漬けを数回繰り返すと本漬けに入れます。
◉ぬか漬けをしましょう
ぬか漬けには新鮮な野菜を使います。
- そのまま漬けるもの(きゅうり、人参、大根、キャベツ、かぶ、うり、セロリ、オクラ、ミョウガ)
- 塩で揉んでから漬けるもの(水菜、ツルムラサキ、かぶ葉、大根葉)
- とぎ汁で茹でてから漬けるもの(固い野菜、アクの強い野菜、かぼちゃ、ごぼう、ブロッコリー、タケノコ)
<しいな流・美味しさアップ⤴︎秘訣食材!>
- 煮干し…2〜3匹(頭とハラワタは取り除きます)2〜3日で取り出す。
- かつお節…ひと握りをお茶パックに入れて埋め込み、2〜3日で取り出す。
- 干し椎茸…乾物のまま1〜2枚。水分を吸ったら3日くらいで取り出し、椎茸は調理していただきます。
- 青梅の実…よく洗って2〜3個埋めます。果肉が溶けたらタネを取り出す。香りづけと防腐効果があります。
- 米麹(または塩麹)…適量を加えてかき混ぜます。ぬか床に元気が出ます。

◉毎日の手入れ
ぬか床の適温は20〜25℃。私たちが快適に過ごせる温度と同じです。直射日光の当たらないところに保管します。夏場の暑い時期や冬の寒い時期にはエアコンのある部屋に移動するなどして温度管理をします。ぬか床は30℃以上になってしまうと、ぬか床の菌が異常発酵する場合があるので、夏の暑い時期は冷蔵庫に入れるのもおすすめです。
ぬか床は1日1回かき混ぜます。清潔な手で、ぬか床全体を大きくかき混ぜるようにして空気に触れさせます。こうすることで、異常発酵を防ぐことができます。ぬか床を混ぜるときに、においや味をチェックします。いつもと違うにおいがしたら早めに対策しましょう。
※いつもと違うにおい…腐敗臭、すっぱいにおい、濡れた雑巾みたいなにおい、ツンとするにおい、アルコールのにおいなど
よく混ぜた後は、手でぬか床をギュッと押して平らにして空気を抜きます。できるだけ空気に触れる面を少なくすることで酸化が防げます。容器の内縁を布巾で綺麗nに拭き取り、蓋をしっかりとしめて保管します。
ぬか床の水分量は、ぬかをギュッと握った時に指の間からほんのり水分がにじむくらいがちょうどいい水分量です。
◉におい別対策!!
ぬか床の状態はにおいに表れます。毎日かき混ぜる時ににおいを確認しましょう。雑菌が増えたときの匂い、乳酸菌が増えたときの匂い、アルコール発酵しているときの匂い、それぞれ違うので、においは目安になります。
(1)腐敗臭がするとき…乳酸菌が減っていて雑菌が増加しています。水分が多すぎると腐敗臭がしやすいです。雑菌を減らすために、①塩度を高め、②水分を減らします。塩とぬかと唐辛子を足せばいいわけです。そして、乳酸菌を増やすためにせっせと野菜の捨て漬けをしたり、米麹(または塩麹)を加えると、状態が良くなってきます。
(2)すっぱいにおいがするとき…乳酸菌が増えすぎている状態です。乳酸菌を減らすには、①ぬか床をかき混ぜる(空気に触れさせる)、②塩度を高めるために塩を足す(乳酸菌の異常増殖を抑えます)、③水分を減らす(塩とぬかと唐辛子を足します)、④保管温度を20℃以下にする(20℃以下は乳酸菌が苦手な温度です)ぬか床の酸っぱさを中和させるには、カルシウムを多く含む野菜(小松菜など)を漬けると中和されていきます。
(3)濡れ雑巾みたいなにおいがするとき…酪酸菌の増えすぎが考えられます。酪酸菌は空気が苦手なので、ぬか床をよくかき混ぜて(空気に触れさせる)、においがなくなったら捨て漬けをしてみてください。
(4)シンナーのようなにおいがするとき…産膜酵母(さんまくこうぼ)ができていることが多いです。アルコール発酵とともに乳酸菌も増えているので、白い膜も中に入れ込んでよくかき混ぜるとおさまってきます。においがおさまったら捨て漬けをしてみましょう。
(5)アルコールのにおいがするとき…酵母菌がの増えすぎていることが原因です。①よくかき混ぜ、②塩を足し、③通気性をよくして保管場所の温度を下げます。
”ぬか”はお米の中で一番栄養価の高い胚芽の部分です。その”ぬか”を発酵させたぬか床は、家ごとに代々受け継がれています。私の義母は「ぬか床を他にくれてやる(あげる)と、あげた家が破産する。」というほど大切にしているのです。毎日かき混ぜるぬか床には野菜から出た栄養素のほか、乳酸菌、かき混ぜる人の常在菌も加わり、豊かな乳酸菌の宝庫に育ちます。
”乳酸菌”とは、糖を発酵して乳酸に変える細菌の総称です。乳酸菌は糖をエサとし、その代謝物として乳酸を生成するのです。乳酸菌が注目されるようになったのは、小腸下部から大腸全体に棲みつく微生物の多様性とバランス(腸内フローラ)が健康状態に大きな影響を与えることがわかり始めているからです。微生物が多く棲む腸は食べ物を消化し吸収する場所です。私たちが栄養素を体内に吸収する場所で、多くの働きをする微生物の種類や割合やバランスなどが健康状態に現れます。例えば、腸壁の絨毛細胞をつなぐ接合因子が弱く、隙間だらけの腸壁であれば未消化物が簡単に腸壁を通ってしまい腸の透過性が増え、リーキーガットを起こします。腸内の微生物が偏ることなく多様にバランスよく存在すればエサ(食物繊維など)を食べて代謝し、私たちの体に必要な産物を生成します。その産物によって腸内壁の粘膜が守られたり、pHが維持されることによって排便を促したり、免疫力が正しく働いたりするのです。腸内の微生物をバランスよくするためにも乳酸菌を多く含む発酵食品(ぬか漬け)が注目されているわけです。(※ぬか床1gには約10億個の乳酸菌がいると言われています。)






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